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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(そ)5号 判決

主文

原判決中無罪の言渡をなした部分を除きその余を破毀する。

被告人を罰金二五〇円に処する。

右罰金を完納することができないときは、被告人を一〇日間労役場に留置する。

理由

檢事総長福井盛太の非常上告申立の理由について。

原審は被告人に対する窃盗同未遂、住居侵入の本件公訴事実中窃盗、同未遂の点は証明がないとの理由で無罪とし、住居侵入の点を有罪として被告人を懲役六月に処し、但し裁判確定後二年間刑の執行を猶予する旨の判決を言渡しているのであるが、裁判所法第三三條第二項によれば、簡易裁判所は刑法第二三五條の罪若しくはその未遂罪に係る事件又はこれらの罪と他の罪とにつき刑法第五四條第一項の規定によりこれらの罪の刑を以て処置すべき事件以外の事件については、禁錮以上の刑を科することができないことになって居り、又同條第三項によれば、若しその制限を超える刑を科するを相当と認めるときは、事件を地方裁判所に移さなければならないことになっているのである。

從って原審が事案審理の結果若し住居侵入の点のみを有罪とする判決をなすを相当と思料するにおいては、本來罰金刑を言渡すか然らずんば事件を地方裁判所に移すべきであったのである。然るにかゝる措置に出ることなく自ら右裁判所法所定の制限を超えて懲役刑の言渡をなした原判決は明かに同法第三三條第三項に違反するものであり、本件非常上告は理由がある。

しかも原判決は被告人の為に不利益であるから、刑事訴訟法施行法第二條、旧刑事訴訟法第五二〇條第一号但書によりこれを破毀し本件について判決を為すべきものである。

原判決認定の各住居侵入の事実はいずれも刑法第一三〇條に該当するので所定刑中罰金刑を選択して処断すべきところ、罰金額については、本件犯罪後昭和二三年法律第二五一号罰金等臨時措置法が施行されその変更があったので刑法第六條により新旧両法対照の結果軽い行為時法の罰金額により、以上住居侵入の各所為は刑法第四五條の併合罪に当るので、同法第四八條第二項により以上を合算した金額の範囲内において被告人を罰金二五〇円に処し、同法第一八條に則り、右罰金不完納の場合の労役場留置日数についての換算をなし主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 藤田八郎)

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